晩秋の空

11月3日、山梨県の三ツ峠山(1785m)へ日帰りツアーがあった。
天気はまずまず、11月にしては暖かな日だった。
雑木の登山道を登って行くと、ふわふわと白い虫が何匹も飛んでいた。
それは「雪虫」であった。 小雪が舞い落ちるように僕の手にも舞い降りた。

晩秋から初冬にかけての穏やかな日に、この虫は飛ぶ。
「もうすぐ雪が降るよ」と、冬の到来を告げる虫である。

雪虫

雪虫はアブラムシの一種で通常は翅がない。しかし、晩秋になると翅のある
オスとメスが現れ越冬のために卵を産む。
雪虫と呼ぶのは主に北国の人たちで、地方によって呼び名は違う。
井上靖の小説「しろばんば」に登場する しろばんば は伊豆での雪虫のこと。

この雪虫の出現するのと同じ頃、やはり穏やかな日にクモが空を飛行する。
小さなクモは草の先端まで上がり、お尻を天に向け糸を流す。
糸は上昇気流にあおられ、クモは足を離し糸と共に空へと舞い上がる。

これは一部のクモの生態で、子グモたちが新たな生息地を求め移動する手段だ。
山形県の米沢地方では「雪迎え」と呼ぶそうな。

つくづく日本人の感性は鋭く、素晴らしいものだと思う。
アブラムシやクモのような小さな虫をよく観察し、風情ある呼び名を付けたものだ。
かつての日本人の生活は、より自然の近くにあった証でもある。

コンクリートとアスファルトの街に暮らし始めた現代人。人の頭脳は進化して
いくかも知れないが、五感は退化していくのではないだろうか。




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杉浦直樹

Author:杉浦直樹
『自然塾』塾長の杉浦直樹です。
日本自然保護協会
自然観察指導員

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