スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

玄人好みの山

雨で二度も順延となった個人山行にやっと出掛けることが出来た。

場所は北アルプスで、針ノ木雪渓から針ノ木岳(2820m)、蓮華岳(2798m)、
北葛岳(2551m)、七倉岳(2509m)へと縦走するコースであった。

扇沢

針ノ木岳と蓮華岳はツアーでも何度かガイドをしていたが、蓮華岳から南下して
北葛岳、七倉岳へと回るルートは危険な岩場も多く、長丁場とあってツアーでは
組まれることはなかった。

未踏のコースであったこと、また北アルプスの殆どの山が展望できるコースとの
ことでかねてより画策していたのだ。

針ノ木雪渓

針ノ木雪渓は白馬大雪渓や剣沢雪渓に比べると幅は狭く融けるのも早い。
この時期は雪渓上を歩くよりも夏道を歩くことの方が多い。

ここ数日の長雨でかなりの水が出たのだろう、丸木橋は流され渡渉する箇所を
探さなければならない場面もあった。

何度も沢を渡りスノーブリッジとなった雪渓を高巻きした。

キンポウゲ

雪が残る谷では所々にミヤマキンポウゲやシナノナデシコやタテヤマウツボグサ
など、夏の花が取り残されたかのように咲いていた。

扇沢の登山口よりちょうど5時間、針ノ木峠に建つ針ノ木小屋に着いた。
2泊3日の1泊目は針ノ木岳と蓮華岳の間にあるこの山小屋になった。

針ノ木小屋

年に数回だがお客さんをお連れしない個人山行に出掛けている。
それは自分が行きたい山だったり、危険を伴う山だったり、少しマニアックな
山であることが多い。

従って、同伴者はいつもガイド仲間となる。 今回も10年来の友人とやって来た。

北葛・七倉

標高2536mにある針ノ木小屋の窓から南の山々を見るとこんな感じ (^-^)/

近景は左端に北葛岳、中央のピラミダルな山は七倉岳、そして右に船窪岳と続く。
遠景は左から餓鬼岳、唐沢岳があり、その奥に燕岳、大天井岳、さらに右へ西岳、
前穂高岳、北穂高岳、槍ヶ岳が見える。

山頂

翌朝、空荷で針ノ木岳を往復する。 背中に何も担がないと何故か違和感?
小屋から山頂まではちょうど1時間、午前7時の山頂は快晴であったが風は強く
冷たい秋の風だった。

薬師岳

針ノ木岳山頂から西を見れば剣岳、立山、龍王岳、鬼岳、獅子岳、五色ヶ原、
越中沢岳、そして薬師岳(2926m)と壮大な景色を望むことができた。

ことに薬師岳はすぐ近くにあり、金作谷カールや中央カールまではっきりと見えた。
山は雲が出ぬ午前中が勝負、再び針ノ木小屋まで戻り次の蓮華岳を目指した。

ウラシマツツジ

蓮華岳の尾根より振り返り針ノ木岳を見る。
夏はたくさんのコマクサが咲く蓮華岳、今は真っ赤に色づいたウラシマツツジが
足下にあった。 

秋口の登山は実に快適である。
夏のように額からポタポタと汗が落ちることもなく、空気は澄み眺望が利く。
山小屋も混雑することなくゆっくりと寝ることが出来る。
高山植物は無いが山を楽しみたいのなら断然、秋口がベストである。

爺・鹿島

徐々に湧き立つ白い雲は緑の谷を埋めて尾根へと迫る。
爺ヶ岳も鹿島槍ヶ岳も飲み込んでしまうのか、ふわふわと真綿のような雲だった。
その後ろには五竜岳、白馬岳も見える。

寄せる雲海

日本海に注ぐ黒部川を挟んで西側の薬師岳や立山や剣岳を立山連峰と呼び、
黒部川東側の鹿島槍ヶ岳や五竜岳や白馬岳を後立山連峰と呼ぶ。

その後立山連峰の南端に針ノ木岳と蓮華岳は位置している。
両者は針ノ木峠で東西に対峙し、蓮華岳はどっしりとした稜線を横たえている。

蓮華岳

意外と長い蓮華岳への道。 しかし、空は快晴、心も爽快、晴れて本当に良かった。

ここ一ヶ月は天気予報とにらめっこ「いつまで続くこの傘マーク?」そんな毎日だった。
ようやく3日間の晴れ間を見つけ決行する運びとなった。

自然災害と言うが、川の氾濫によって浸水被害を被った人たちもおられる中で、
その自然が造り出した壮大な景色と遊べることに感謝であった。

大下り

さてさて、今回の登山はここからが本番。
蓮華岳を一気に下る「蓮華の大下り」と呼ばれる過酷な道を進まなければならない。

まずは山頂直下のザレ場をジグザグと下る。 小石に足を取られ転倒しやすいため
絶えず足を踏ん張り、緊張を要する。
これがまた長い下りで、やっと終わったかと思うと今度は岩場の急下降が始まる。

長い鎖

ほぼ垂直のように見える岩壁にそれは、それは長~く垂らされたクサリ。
「人が小さい!!

鞍部となる北葛乗越まで標高差にして約500m下がる。
下れば登る、それが登山。 今度は北葛岳までの長い登りが始まった。

コースタイム2時間30分のところ3時間を要し北葛岳に到着となった。

岩壁

ここまでの内容はあらかじめ想像していたが、次の七倉岳は想定外だった。
北葛岳の山頂で腹ごしらえを済ませると、再び急下降することになった。

「どこまで下ろす気だ!!」と叫びたくなるほど下ろされ、また登る。
しかも岩場あり、やせ尾根ありで幾度となく繰り返されるアップダウン。

もう山頂かなと思えばまだ先があり、今度こそと思えどまだ続く尾根。
七倉岳は簡単と甘くみていた。 このアップダウンに気力も萎えヘロヘロ。
またしても30分タイムオーバーとなり、午後2時45分船窪小屋に着いた。

船窪小屋

タルチョー(チベットの五色の祈祷旗)がはためき鐘の音で宿泊者を迎える船窪小屋。
実はこのコースを選んだ理由のひとつに船窪小屋に泊まってみたかったのがあった。

ここは食事が美味しくアットホームな山小屋だと評判の良い小屋であったからだ。

ランプ

収容人数も少なく小さな小屋だが、小屋を営むご夫婦の気遣いが満載の山小屋だ。
発電設備は無く、灯りはランプのみ、それがまたほのぼのとしたかつての山小屋の
雰囲気を漂わせている。

夕食

夕食はまだ陽のある夕方5時からで料理は手の込んだものがテーブルに並んだ。

メインの天ぷらの食材はカボチャ、ナス、長芋などの野菜に加え小屋周辺の野草
トウヒレンやヤマニンジンなど。 煮物に生春巻きと、手作り感いっぱいである。

小屋は稜線にあるため水がない。 飲料水は小屋から30分離れた水場に汲みに行く。
電源がないため当然のことながら冷蔵庫もない。 食材は岩室で保存しているそうだ。

そんな悪条件の中でこれだけの食事を提供できるのは凄いとしか言いようがない。
いろんな苦労や努力があるだろうが、登山客には終始穏やかに対応をされていた。

いろり

夕食後にお茶の時間があり、宿泊者のみんなにネパールティが出された。

当日の宿泊者は14名ほど、囲炉裏を囲み宿泊者の自己紹介が行われた。
少人数の山小屋ならではの寛ぎタイム。 リピーターが多いのもうなずける。

船窪小屋までの最短コースは七倉から急登の七倉尾根を6時間かけて登ら
なければならないが毎年、小屋だけにやって来る登山者も少なくないと言う。

不動岳

翌朝、空が明るくなるにつれ小屋の前には重畳(ちょうじょう)たる山並みが現れた。
正面には不動岳(2595m)が座り、後方には水晶岳、赤牛岳、さらに奥へと薬師岳、
越中沢岳と果てしない山並みが続いていた。

この小屋の前からいったい幾つの山が見えるのだろう。 
剣岳から前穂高岳まで見渡せる山小屋はそんなにないだろう。

立山

山で最も感動するシーンに出会えるのは日の出時刻と日の入り時刻である。
自然が造り出す光と色の一大スペクタクル。 だが、数分で消えてしまう芸術作品。

この日、高瀬ダムから続く不動沢に薄いベールのような雲が漂い不動岳を包んだ。
雲は水平を保ち、まるで水をたたえているかのようでハイマツは水槽に沈んでいる
藻のようにも見えた。

水槽

今回の山行は雪渓歩きと渡渉にクサリとハシゴの連続する岩登り、
そして時代に取り残されたようなランプの山小屋に泊まる2泊3日の旅だった。

山の魅力がいっぱい詰まったコースではなかったか。
百名山ブームに惑わされない本当に山を知っている人向けのコースであろう。

久しぶりの筋肉痛もさほど苦にならず、秋風に似た爽やかな余韻を持って
七倉尾根を下った。
スポンサーサイト
プロフィール

杉浦直樹

Author:杉浦直樹
『自然塾』塾長の杉浦直樹です。
日本自然保護協会
自然観察指導員

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。