越後の山旅

秋の登山はやはり紅葉の綺麗な山がいい。 天高き青空に錦の山々が見たい。
栗駒山や八甲田山など、紅葉の綺麗な山は東北に多い。 
でも、さすがに東北は遠い。 車移動で足を伸ばせるのはせいぜい新潟までだ。

「そうだ、新潟に行こう!!」 どこかで聞いたフレーズだが、この秋の登山は
新潟の名峰「越後駒ケ岳」に決まった。

越後駒ケ岳は昨年の秋に登った浅草岳鬼面山コース同様に往復9時間を要する。
秋は日没が早く、下山時刻を考慮すると脚力が求められる。
同行者は昨年と同じガイド仲間3人となった。

ヤマウルシ

新潟へはいつも中央道と上信越道を使って北上して行くことが多かったが
今回は東名高速の海老名Jctから圏央道を経由して向かうことにした。

岡崎から南魚沼の小出までは約500キロ、所要時間は全線高速でおよそ6時間。
あまり馴染みのないルート、どこか道草できる面白い所はないか?
どこかに美味しい食べ物屋さんはないかとキョロキョロ。

「桐生のひもかわうどんはどうか」 何じゃ、それは。聞いたことも見たこともないぞ。
友人のその一言で急きょ高崎Jctから北関東道を桐生へと向かう。

サワフタギの実

昨今は便利な世の中となった。すぐにスマホで評判の良い店を検索して車のナビに
入れれば、いとも簡単に希望が叶えられる。

こうして全く予定していなかった桐生で「ひもかわうどん」を食べることになった。
どこまでも平坦な土地が続く関東平野をひた走り、赤城山の麓・桐生に着いたのは
ちょうどお昼12時だった。

八州

やって来たお店は「うどん 八州」、江戸時代の関東(相模、武蔵、安房、上総、下総、
常陸、上野、下野)八ヶ国を指す「関八州」から屋号を付けたのだろうか。

店は幹線道路から外れた街中にあり、地域の食堂といった感じであった。
白壁の日本家屋に、いかにもうどん屋さんらしい晒しの暖簾が似合っていた。

ひもかわうどん

メニューを見ると麺の種類は極太うどんから厚伸ばしひもかわ、薄伸ばしひもかわなど
5種類あったが、ここまで来たからには特徴のある「薄伸ばしひもかわ」にした。

どうやら付け汁で食べるらしく、肉汁、カレー汁など何種類かあり選ぶことが出来る。
季節は秋、迷うこと無くキノコ汁を選択した。

薄伸ばし

がっ、はっ、はっ ヽ(´∀`)ノ これが、うどんか!!
つるんとした食感にこの喉越しは何だ。 普通のうどんとは全く違っていた。

お揚げやキノコのたくさん入った付け汁で頂くと意外にお腹が膨れた。
これで680円とは大満足。 絶賛すべき桐生ひもかわうどん。

駒の湯

前泊したのは魚沼市の湯之谷温泉郷の最奥にある「駒の湯山荘」だ。
越後駒ケ岳の深い谷を詰めたところにあるランプの一軒宿である。

周囲に人家らしきものは一切無く、冬季は閉鎖される秘湯の宿。
湯量は豊富だが湯温が低い、ここは「長湯」という入浴法で入るとか。
源泉温度33度のぬる湯と過熱した湯に交互に浸かるのだという。

この季節、ぬる湯に長い時間浸かっているのはちょっと厳しいものがある。
温泉は少々期待外れだったが食事は期待以上の内容であった。

朱塗りの膳

朱塗りの膳に朱塗りの器、見事なまでに漆器で統一された膳である。
食前酒はマタタビ酒で黒毛和牛のユッケ、鶏のささ身の生ハムと山のご馳走があり
炭火で焼かれたイワナの塩焼きに、一品ずつ揚げるごとに運ばれてくる天ぷらなど。
電気のない山荘からこれだけの夕食は想像していなかった。

かつてこの地方の農家の人々は稲の収穫を終えると互いに労をねぎらう「田人呼び」
(とうどよび)という宴を設ける風習があったそうだ。 
機械化されない以前の農作業は過酷で村人総出の作業も多くあったに違いない。 
朱塗りの器に最高の料理を盛ってもてなし、互いの協力に感謝し絆を深めたのだろう。

こんな山奥で新潟伝統の漆器に出会うとは、山荘の心憎い演出である。
そして、朱塗りの器で頂く魚沼産コシヒカリの新米はまた格別の美味しさであった。

越後駒ケ岳

翌日、まだ朝もや煙る宿を早々に出発。 30分ほどで登山口となる枝折峠に着くが
ここも霧に包まれて遠景は望めなかった。

枝折峠はこの時季、条件が良ければ湧き立つ雲が山の稜線を越えて風下の斜面に
沿って流れる「滝雲」が見られる絶景ポイントだったが残念であった。

3時間も登るとようやく雲が切れて頭上に青空が見え、越後駒ケ岳も顔を出した。
しかし、山頂は遥か遠くあと2時間は歩かなければならない。 

行程のほとんどは尾根歩きで危険な個所は無く、眺望と紅葉を楽しむルートである。
風の強い日は苦戦するだろうが幸いにして今日は風がない。

眼下に銀山平と奥只見湖が見える。 その先は福島県、尾瀬である。
江戸時代、銀山平から駒の湯へと銀を運んだ「銀の道」も登山道と交差していた。

道標

午前6時30分から歩き始めて5時間、真紅とも緋ともいえるヤマウルシの紅葉や
鮮やかな瑠璃色の実を枝いっぱいに付けたサワフタギに励まされ、11時30分
ようやく越後駒ケ岳の山頂にたどり着いた。

2003mの頂に立つと荒沢岳、中岳、八海山が指呼の距離で見えた。
豪雪地帯の山々、いずれも鋭い岩峰をあらわに雄々しくそびえていた。

雪深き越後の山よ、また来年!!  さて、4時間かけて下るか。 (T_T)

栃尾又温泉

下山後も越後駒ケ岳の麓にある栃尾又温泉に泊まった。
ラジウム温泉として、また湯治場として有名な「自在館」だ。

湯治棟

こちらは本館の隣にある大正時代に建てられた木造3階建ての湯治棟。
う~ん、雰囲気あるなぁ、雪の季節はどんなだろう?

ここの温泉も源泉そのままのぬるい湯船と過熱された温かい湯船があり、
ぬるい湯に1時間~3時間ほど長く浸かり最後に熱い湯で温まってあがる
「長湯」という入浴で湯治をするのだとか。

本館も寛げる民芸調に造られていて、ホールには湯治場らしく将棋盤が置いてあり
何十年振りかで将棋を指し、にわか湯治客の気分を味わった。

地酒ケーキ

2泊3日の最終日は帰るのみ、帰路は長野回りで帰ることにした。
ゆっくり宿を立つと小出の町へ、この町の和菓子屋さんに立ち寄った。

魚沼の日本酒の銘柄に知る人ぞ知る「緑川」がある。 その酒蔵とタイアップして
作られたお菓子「地酒ケーキ緑川」を買いに寄ったのだ。

封を切ればほんのりと漂うお酒の香り、スポンジはきめ細かくしっとりとお酒を含み
とても美味しかった。 (笹だんごや柿の種だけが新潟土産ではないのだ)

へぎそば

国道17号から八箇峠を越えて国道117号へ入ると、そこは十日町。
ここにも素通りできない郷土色豊かな食べ物「へぎそば」がある。

そばのつなぎに布海苔を使用し独特のコシに喉越しがよく、へぎと呼ばれる器に
盛られて出される。 へぎとは剥ぐ(へぐ)の訛りだとか、杉の板を剥いだ木箱だ。

そして「手振り」あるいは「手繰り」といわれる方法で波模様に盛り付けられる。
写真のへぎそばは3.5人前、3人でもちょっと多い分量でお腹いっぱいになった。

今回も山を登りに行ったのか、温泉に浸かりに行ったのか、はたまた食べ歩きに
行ったのか、主な目的があいまいな旅となってしまった。

しかし、見知らぬ土地を旅するということはこんなものではないだろうか。
非日常に心踊らせ、様々な見聞に感動を覚えつつ、ひとつずつ思い出を重ねて
いくのだろう。 よき旅を、よき人生を歩んでいきたいものだ。
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プロフィール

杉浦直樹

Author:杉浦直樹
『自然塾』塾長の杉浦直樹です。
日本自然保護協会
自然観察指導員

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