秋の若狭路 青葉山

日本の各地には「○○富士」と呼ばれる美しい山容を成す山がいくつもある。
秀麗富士を愛する日本人、その思いがおらが村にも「○○富士」を生むのであろう。

中には「これが?」の疑問符がつく山もあるが、とりわけ美しい富士が若狭にある。
その名も「若狭富士」と呼ばれる青葉山はすこぶる美しい。

福井県と京都府の境にあり日本海に面してそびえ立つ。

若狭富士

11月も半ばを過ぎ里の紅葉もそろそろ終わり、日暮れも早くなり風も冷たさを増す。
されど、山から遠ざかることはない。 面白い山を見つけてきてはせっせと登る。

今回は1泊2日で○○富士と呼ばれる山を2座登る旅に出た。
「若狭富士」青葉山と福井県敦賀市にある「敦賀富士」野坂岳だ。

今年の夏に舞鶴若狭自動車道が全線開通して敦賀から小浜や舞鶴が近くなった。

青葉山

青葉山は京都府側から見ると東峰(693m)と西峰(692m)にはっきり分かれており
けして富士と呼べるような山容ではない。
しかし、福井県側から見ると双耳峰は重なり見事な三角形を成して見える。

ことに美しいのは若狭の海を手前にして見る青葉山は実に美しい。
(和田の海岸より波打ち際まで下り、寄せる波音を聞きながら撮影)

ツチグリ

青葉山の登山口は西国33観音霊場の第29番札所「松尾寺」境内の奥にある。
荒廃した竹林を抜けて雑木の山道に入ると足下に怪しげな物体を発見。

これはツチグリという秋によく見掛けるキノコ。 外皮は湿気を感じると星形に開き、
雨が降り雨粒が本体に当たると中央の口から細かい胞子を煙のように吐き出す。

雨が上がり乾燥すると外皮は再び閉じて球形となる。 良く晴れた日は風によって
転がり森を移動する。 離れた場所でまた胞子を飛ばし繁殖をするのだ。

こんなことからツチグリは「晴天の旅行者」とか「森の湿度計」とも呼ばれている。
たった2センチほどの小さなキノコ、よくこんな手法を考え出したものだと感心する。

ツクバネ

イロハモミジにウリハダカエデなど秋は紅葉する木々の葉に目を奪われがちだが
木の実も熟して赤や紫へと色を変え、その形も様々でまた面白い。

この羽根突きの羽根に似た実はビャクダン科のツクバネの実だ。
地味な色でなかなか見つけづらいが4枚の苞がユニークで茶花として使われる。

ツクバネはツガやモミなどの針葉樹の根から養分をいただく寄生植物だが
自らも葉緑体を持ち光合成をするため半寄生植物である。

大きな苞が翼となり回転することで落下速度が遅くなり、より長く空中にとどまる。
従って、わずかな風であっても種子は遠くへと運ばれる仕掛けだ。 
すべて計算された形がこれだった。

小浜西組

今回は小浜の古い街並みを歩く機会を得た。 初めて訪れる町だった。
小浜については鯖街道の起点となる町ぐらいの知識しかなかったが、
江戸時代は小浜藩がおかれ城下町として栄えた街だという。

ここ小浜西組は江戸時代の町割りの名で、かつて茶屋街があった場所である。
海岸通りより路地に入って行くと風情ある千本格子の町屋が何軒も並んでいた。

喫茶店など立ち寄れる場所はないものかと探し歩いていると、たまたま玄関先に
おられた地元の方に声をかけられ、しばらく立ち話をした。

かなり年配の女性であったが、その言葉は明らかに京言葉。
小浜は昔から若狭の海産物を京の都へと運んでいたため京都との交流が深く
京文化の影響を強く受けている土地柄であった。

料亭 酔月

この建物は明治初期に建てられたという料亭「酔月」。 栄枯盛衰は世の常、
今は人通りも少ないがかつてはこの二階の窓にも連夜のように宴の灯りが
ともっていたことだろう。

「酔月」の他にも何軒かの軒先に料亭の文字がかかる建物があった。
先ほど出会った人もこの界隈で仕事をされていた方だろうか。

京言葉の柔らかい響きだけでなく、お歳を召されても身なりはとても上品で
気品さえ感じさせ印象に残る方だった。 持論、街は人を育てる。

若狭の海に美しいシルエットを描く青葉山といい、千本格子の町並みに
暮らす人といい、今回は美しい日本を巡った旅であった。 おしまい。
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プロフィール

杉浦直樹

Author:杉浦直樹
『自然塾』塾長の杉浦直樹です。
日本自然保護協会
自然観察指導員

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