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若葉の頃・くらがり渓谷

春の山は日に日に鮮やかな緑へと変わる。
生まれたての若葉はすべて瑞々しく、
注ぐ光は木々へと吸い込まれていくようだ。
そこに吹く風は優しく、鳥達は恋の季節を迎える。

「春眠暁を覚えず」 のんびり朝寝坊をした休日、
昼近くになって自宅から車で50分程のところにある
「くらがり渓谷」に出掛けた。

くらがり渓谷

渓谷沿いの森へ入るとすぐにオオルリの出迎えを受けた。
そこがお気に入りのソング・ポイントなのだろうか、
谷に張り出した枝にずっととまっていた。

人の気配を感じてか、控えめなさえずりであったが
その声も瑠璃色の姿も美しい鳥であった。
「幸せの青い鳥よ、東北地方にも飛んで行くかい?」

オオルリ

平日の昼間とあって逢う人はほとんど無く、渓谷の瀬音と共に歩いた。
くらがり渓谷は名前の通りあまり陽を射さず、やや暗い。

岩肌からは水がしみ出し、シダやコケが目立つ。
スギの木立ちの下には所々でカンアオイが見られた。

ヒメカンアオイ

葉が円いことや、いまだに花が残っているところを見ると
これはヒメカンアオイだろう。 イワタカンアオイにもよく似ている。

時折吹く風にヤマザクラの花びらがはらはらと頭上から舞いかかる。
山で見るヤマザクラはことのほか風情があり、心癒される。
赤味を帯びた若葉と薄紅色の花との色合いが絶妙であり、
それらを引き立てるように黒褐色の枝が深みある陰影の美を添える。

ふと川岸を見ると木の枝にたくさんの実をつけた低木を見つけた。
まるでソラマメのような形をした実だった。

コクサギの雌花

これはコクサギ(ミカン科)の雌株。 緑色をした小さな雌花が見て取れる。
種はすでにはじき飛ばされた後なのだろう。 中には何も入っていなかった。

コクサギの雄株

そして、こちらが雄株。 雄花は総状に複数つくのがわかる。
この木はコクサギ型葉序と呼ばれる独特な葉のつき方をする。
ところで、花序はどうなのか? はっきり確認するのを忘れた。

ウラシマソウ

くらがり渓谷沿いの道は本宮山へと続く登山道だ。
脇にはあちらこちらでスルガテンナンショウが見られた。
その中に一株だけウラシマソウがあった。
なぜか懐かしさに似たものを感じ、
話しかけるようにしゃがみ込みカメラを向けた。
「今日の成果はあったかい? 浦島さん」

そして、もうひとつ多く見かけたのがこの植物。
葉の質感や出方に特徴があるので覚えやすい花だ。

マツカゼソウ

これはマツカゼソウの葉だ。ミカン科にあって唯一の草本である。
花は夏から秋に咲くため、秋のイメージが強い植物だが
こうして春早くから若葉を展開させている。
勤勉実直、植物にも努力家はいるものだ。

では何故、くらがり渓谷にマツカゼソウが多いのか。
本宮山には「砥鹿神社奥宮」が祀られている。
その使いが鹿とされ保護を受けているのだろうか
渓谷沿いのササはことごとく鹿に食べられている。
しかし、マツカゼソウには特有の臭気があり鹿も食べないのだ。

花を見つけては足を止め、写真を撮った。
鳥の鳴き声にまた足を止め、声の主を探した。
のんびり、ゆっくり午後の渓谷を歩いた。

見渡せばまだ芽吹き前の木も多い。
遠目に見ると枝が赤くなっている高木があった。
双眼鏡で覗くと、それはハナノキ(カエデ科)だった。
驚くことに、もうすでに大きな翼果を実らせていた。
(オドロキ!!、 ショウゲキ!!、 ハナノキ!!)
カエデの結実は早いが、その木はまだ葉の展開する前なのだ。

イロハカエデをはじめ、ウリノキ、ハウチワカエデなど
この渓谷にはカエデの類が多く見られた。

イタヤカエデ

これはイタヤカエデの花。 枝いっぱいに無数の花をつける。
離れて見ると鮮やかな黄色い花は新緑と見間違えるほどだ。
イタヤカエデは落葉高木、高木になればなるほど、それはそれは見事である。

昨日の強い風で飛ばされたのだろう
登山道には黄色い花がらが一面に落ちていた。
「花がらのじゅうたんなんて贅沢だよね」

チドリノキ

こちらはちょっと変わったチドリノキ。 沢沿いでよく目にするカエデだ。
ほとんどのカエデの葉はカエルの手に似た形をしているが、
チドリノキはシデの葉に似ている。しかし、枝葉は対生する。
この木の特徴は芽出しの時の赤味を帯びた鱗片葉である。
この写真でもよく見て取れる。

針葉樹や照葉樹の陰に咲く花は少ない。 ジョウジョウバカマも
ナガバノスミレサイシンも花は終わっていた。
数少ない草花の中でこの花があった。

トチバニンジン

これはトチバニンジン(ウコギ科)の葉だ。 中央に花の蕾が見える。
樹林下に生え花も目立たず、あまり気に留めてもらえない植物であるが、
葉の形や秋の赤い実の造りなど造形的に面白い植物で好きな花である。

少し汗ばんだ背中からザックを下ろし水を飲んだ。
山頂など端から頭に無い。今日はここで引き返すとしよう。

この渓谷を歩くのは久しぶりだった。
心なしか林床、林縁の花は少なくなったような気がした。
それが遅れている春のせいなのか、鹿の食害のせいなのか、
ここは身近にあって自然が楽しめる場所である。
ずっとこの自然が壊されないでいて欲しいと願う。

ウワミズザクラも、イヌザクラもまだ蕾。
コバノガマズミも、カマツカもまだ蕾。
樹木の花は5月から、 今は若葉の頃。

すがすがしい若葉の色を目に焼きつけ帰路につくことにした。




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杉浦直樹

Author:杉浦直樹
『自然塾』塾長の杉浦直樹です。
日本自然保護協会
自然観察指導員

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